本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。
訪問介護は2025年に事業者倒産が176件と過去最多を更新した業種です。資金繰り管理を誤ると倒産リスクが一気に高まるため、業種特有の資金構造を正しく理解することが経営安定の鍵になります。
訪問介護の売上計上の特殊性
訪問介護の介護保険報酬は、サービス提供時点で売上を計上し、実際の入金は約2ヶ月後になります。この「売上と入金のズレ」が、他業種にはない大きな特徴です。
そのため、月末時点で未収入金(売掛金)を正確に計上することが不可欠です。そうしないと利益が出ているにもかかわらず資金が不足する「黒字倒産」のリスクが高まります。
実務上よくあるのは、以下のような状態です。
・帳簿上は黒字
・売上も順調に伸びている
・しかし手元資金が足りない
これは「帳簿上の利益」と「実際の入金」のタイミングが一致していないことが原因です。
したがって、経営判断は必ず「資金繰りベース」で行う必要があります。
最低でも3ヶ月先までの入金・支出スケジュールを見える化し、資金ショートを未然に防ぐことが重要です。
資金繰りで押さえるべきポイント
訪問介護事業所では、特に以下の点が重要です。
・売掛金残高の毎月チェック
・国保連からの入金スケジュール管理
・給与・賞与・社会保険料の支払タイミング把握
・処遇改善加算の入金タイミングの把握
売上が伸びている局面ほど、先行して人件費が増えるため、資金繰りはむしろ厳しくなります。この「成長=資金圧迫」という構造を理解していないと、一気に資金ショートに陥ります。
2026年6月の介護報酬臨時改定と税務影響
2026年6月から、介護報酬は臨時改定により+2.03%の引き上げが予定されています。訪問介護では処遇改善加算が最大28.7%まで引き上げられ、スタッフの賃上げ原資が拡充されます。
一方で、この賃上げは単なるコスト増ではなく、税務上のメリットにもつながります。
具体的には、賃上げ促進税制の活用により、税額控除を受けることが可能です。
ただし、この制度は事前の要件確認や適切な数値管理が不可欠です。
以下を早めに準備することが重要です。
・賃上げ計画の設計
・給与総額のシミュレーション
・税額控除の試算
・決算見込みの把握
まとめ
訪問介護事業所の経営は「利益」ではなく「資金繰り」で判断することが重要です。特に、介護報酬の2ヶ月遅延構造を理解しないまま経営を行うと、黒字でも倒産するリスクがあります。
また、2026年の報酬改定はチャンスでもありますが、準備不足だと単なるコスト増に終わります。資金繰りと税務の両面から事前に対策を行い、安定した経営体制を構築していきましょう。
北九州市(小倉北区・小倉南区)、下関市で訪問介護事業所を運営されている方で、資金繰り改善や税務対策についてお悩みの方は、三股秀之会計事務所までお気軽にご相談ください。
